交通事故

専業主婦やパートの方が交通事故のむち打ちで休業損害を請求するには

交通事故で怪我をしたとき、損害賠償請求できるものは、慰謝料や治療費だけではありません。
交通事故の怪我が原因で動けなくなった、または、通院治療で時間がとられてしまったために手に入れられなくなったお金、「休業損害」も請求できます。

また、家事も立派な「仕事」です。よって、専業主婦、または僅かなパート収入だけの兼業主婦も、休業損害を受け取ることができます。

しかし、休業損害は、仕事の内容や怪我の性質・程度などによって計算方法や金額が大きく変わります。
特に家事は、料理や洗濯など様々で、しかも、育児や介護など、大きく性質が異なるものもあります。

よって、保険会社が強く金額を下げようとする足掛かりになってしまいがちなのです。

ここでは、交通事故でむち打ちになってしまった専業主婦の方(パートをしていらっしゃる方も含みます)の休業損害について、わかりやすく説明します。

1.休業損害について

休業損害とは、交通事故の怪我の悪影響や、入院・通院で時間をとられてしまったために手に入らなかったお金のことです。

冒頭の通り、働いていない、あるいはパートだけの専業主婦でも、休業損害が認められています。

確かに、家事をしたことについて、現実にお金が支払われているわけではありません。しかし、家政婦や家事代行サービスが職業として成り立っているように、家事も経済的価値がある労働なのです。

(1) 休業損害の計算方法

休業損害の基本的な計算方法は、とてもシンプルなものです。1日当たりの収入(基礎収入)を、交通事故の怪我のせいで収入が入らなかった日数(休業日数)と掛け合わせます

休業損害=1日当たりの収入(基礎収入)×交通事故の怪我のせいで働けなかった日数(休業日数)

会社勤めの方であれば、基礎収入は1日当たりの額面年収(実務上の原則的な計算方法は「事故前3か月の収入を90日で割った額」)、休業日数は有給休暇を含む会社欠勤日になります。

もっとも、保険会社との交渉の中では、基礎収入を出すうえで休日も含めて計算するのかなど、細かいところで争いになることもあります。

しかし、主婦であること、そして症状がむち打ちであることは、この計算方法に大きな影響を与えます。
その影響を解説する前に、まずは主婦の休業損害の相場について説明しましょう。

(2) 休業損害の相場

交通事故の損害賠償請求の相場には、①自賠責基準・②任意保険会社の基準・③弁護士基準の3つがあります。

①自賠責基準

人身事故の賠償金を最低限保証する自賠責保険会社からの支払いの基準です。120万円の上限があります。

休業損害の金額は、基本どおり、「基礎収入×休業日数」で計算します。主婦の方でも自賠責から支払われる休業損害の計算方法は変わりません。

基礎収入

2019年現在、1日当たり5,700円(より高額であることを証明できる資料を提出した場合、最大1万9,000円まで)です。

【パートの日額が5,700円によりも多かったら?】
怪我のせいで手に入れられなかったパート代が、パートに出られなかった日で割ると5,700円を超える場合には、原則通り、その実際の減収を「主婦として」ではなく、「働いている人」として請求することになります。
パートの一日当たりの収入が、5,700円を超えていたら、その金額をそのまま通院日数にかけるわけではありません。あくまで、「実際に手に入れられなかった」パート代を請求することになります。
休業日数

実際に仕事を休んだ日数が原則です。主婦の場合、家事ができなかったことについては、原則として通院日数がそのまま休業日数になります。

②任意保険会社の基準

自賠責からの支払いには120万円の上限がありますから、治療費や慰謝料などで休業損害が支払いきれないことがあります。それを穴埋めするのが任意保険会社です。

この基準は会社次第ですが、計算方法は自賠責基準とあまり変わりません。

専業主婦の方、特にむち打ちになった方については、任意保険会社は休業損害を払い渋ることが多いです。
「働いていないのだから休業損害なんてないでしょう」などと言う保険会社に当たってしまったら、弁護士に依頼して、次の弁護士基準で請求することを検討しましょう。

③弁護士基準

これは、長年の交通事故訴訟の裁判所の判決をもとに決められています。裁判所はこの基準を尊重するため、「裁判基準」ともよばれており、他の基準よりもかなり高額です。

弁護士基準での基礎収入は、実際の年収をもとにすることが原則です。2019年現在、女性の平均賃金をもとにした基礎収入は1日一万円ちょっとです。

また、計算方法は基本的な「基礎収入×休業日数」だけでなく、「逓減(ていげん)方式」と呼ばれるものもあります。
「逓減」とは、「だんだんと減らしていく」と言う意味です。

その言葉の通り、「基礎収入のうち賠償請求できる金額」を、事故から時間が経過するにつれて基礎収入のたとえば60%、30%、10%と減らしていったりします。怪我が治るにつれて、仕事や家事への悪影響も下がることがあるからです。

なかなか認められないのですが、その代わりに、休業日数を「怪我が治るまでの期間すべて」にできることがないわけではありません。特に主婦の場合、家事は毎日行うからです。
そうなれば、たとえ一日当たりの金額が下がっても、全体としては原則的な計算方法よりも金額が大きくできることもあります。

このように、弁護士に依頼すれば、休業損害をより増やせる可能性があります。

しかし、「家事をしている専業主婦がむち打ちになった」という事情は、弁護士が保険会社と増額交渉をするうえで大きなハードルとなってしまうことが実情なのです。

2.専業主婦のむち打ちと休業損害の注意点

(1) 具体的な休業損害の金額を証明しづらい

専業主婦にとっての「休業」とは、「家事」ができないこと。
家事と一口に言っても、料理や洗濯などその内容は様々です。実際にお金が支払われるわけではないので、たとえばコックのように「料理ができなくなったから料理の売り上げが減った」などと言えません。

平均賃金は、あくまで計算上公平のために利用されているにすぎません。具体的な家事の内容と平均賃金の間に、現実のつながりはないのです。

そのため、基礎収入が平均賃金よりも下がってしまう可能性がどうしても高くなってしまいます。

(2) 家事は「大変だけど」「できる」とされてしまう

指を骨折してパソコンを打てなくなった。足を骨折して営業ができなくなった。…このようなケースでは、だれの目からも、交通事故による怪我のせいで仕事ができなくなっているとわかります。

しかし、むち打ちの症状は痛みやしびれなど「自覚症状」のみです。体を動かしにくくなってしまいますが、動かせないわけではありません。

他人の目からはわかりませんから、「家事がろくに出来ない」ということを証明するのは、よほど重傷でなければ難しくなります。

(3) むち打ちの損害賠償請求自体の証明が難しい

むち打ちは、賠償金の金額が低くなりがちです。
なぜなら、むち打ちの症状は、以下のような徴があるためです。

  • 他人の目から分かりにくく、本人でも言葉にしづらい自覚症状
  • けつまずくなど、日常生活のトラブルでも似たような症状が生じる
  • 様々な検査(特に画像検査)で異常が無くても症状が出ることがある
  • 症状に波がある

これらの特徴のせいで、症状があるのか、どのような症状なのか、交通事故が原因なのかといった、損害賠償請求で証明する必要がある事情のはっきりとした証拠を出せることはさほどありません。

特に、証拠の中でも客観性が高いとして重要視される、専門的医学的な検査結果、「他覚的所見」がとても手に入れにくいため、保険会社との交渉で不利になりやすいのです。

3.休業損害をより多く手に入れるポイント

むち打ちになった専業主婦の休業損害を少しでも正当な金額に近づけるには「家事に影響を及ぼすほどひどい症状が残っていたこと」「むち打ちの具体的な症状の内容・体の部位が、できなかった家事の具体的な内容(洗濯や料理など)と結びついた説明ができること」などが大切になります。

ですから、むち打ちの症状や、家事に生じた具体的な支障の証拠を、できる限り集め、残すよう意識をしてください。

特に、以下のようなことがお勧めです。

  • 医師に症状を丁寧に説明し、カルテや診断書などの医療記録に証拠として残す
  • 同じ症状が同じ部位にほぼ常にあるということを特に確実に伝える
  • 一時的に家事代行サービスや介護ヘルパー、保育サービスを利用した場合は、領収書をしっかりと保管しておく

4.まとめ

休業損害は、被害者の方の具体的な事情を受けやすく、特に家事は、賠償金が低くなりがちです。
それでも、働いていないのだから全く払わない、という主張が通るわけはありません。

また、自賠責基準よりも、弁護士基準で計算した休業損害のほうが、金額が大きくなる可能性は十分あります。
弁護士基準は休業損害だけでなく慰謝料などにも適用されますから、まずは一度弁護士にご相談ください。

泉総合法律事務所では、これまで数多くの交通事故案件を処理してきました。皆様のご相談をお待ちしております。

無料相談受付中! Tel: 0120-080-282 平日9:00~21:00/土日祝9:00~19:00
0120-080-282
平日9:00~21:00/土日祝9:00~19:00
メールでお問い合わせ