交通事故

交通事故のむち打ちを後遺障害と認定されるために必要なこと

交通事故の後遺症については、「後遺障害等級認定手続」で「後遺障害」に当たると認定を受けなければ、賠償金を受け取ることができません。
後遺症による日常生活での不便についての賠償金を受け取れれば、賠償額は一気に跳ね上がることが多くなります。

しかし、交通事故でよくある「むち打ち」は、症状が他人の目から分からない・検査結果に異常が出にくいなどの問題があるため、後遺障害等級認定を受けにくいのです。

ここでは、むち打ちについて後遺障害と認定されるために何をすべきか、どのようなことに注意すべきかについて、分かりやすく説明します。

1.事故後の通院

(1) 事故直後に初診を受ける

まず、事故後2〜3日以内、遅くとも1週間以内には診断を受けてください。

むち打ちは、事故から数日経過して初めて発症することもあります。
しかし、後遺障害の認定を受けるには、「交通事故が原因でむち打ちになったこと」という因果関係があると認められなければなりません。

事故から日にちが空いてしまうと、交通事故以外の原因を疑われてしまいます。

また、どんなに些細な症状でも話してください。

事故により体がどのような衝撃を受けたかを説明し、衝撃の向きや衝撃を受けた体の場所と症状ができる限り結びつくように話すと、医師は、事故内容・受けた衝撃・症状の関連性を医学的な専門知識をもとにまとめ上げてくれるでしょう。

【できる限り早く精密検査を受けることも重要】
むち打ちによる神経の損傷は、画像検査で直接確認することはできません。それでも、MRI検査なら首の神経が周囲の組織により圧迫されていることが分かることもあります。
人間の体は自然と回復していきますから、事故から時間が経つと異常が確認しにくくなります。初診の時とまでは言いませんが、できる限り早くに検査を受けてください。

(2) 定期的に長期間通院する

治療中の通院期間や頻度、さらには、通院中の医師への説明も、認定の事実上の条件に関わります。
また、自覚症状の説明内容が、むち打ちの症状として不自然でないかも厳しくチェックされます。

2019年現在、むち打ちで後遺障害等級認定を受けるには、少なくとも6か月の間、週に2〜3回は通院する必要があります。

最も、医師からもう症状固定したから通院不要と言われているのに強引に通院しても、治療費が無駄になるだけです。

逆に、保険会社から治療費の支払い(いわゆる「一括払い」)を打ち切られてしまった場合、医師が治療の必要を認めているなら、健康保険などを利用して通院すべきこともあります。

弁護士や医師とよく相談して、通院を続けるか検討してください。

(3) 通院中に症状を説明するときのポイント

むち打ちの自覚症状は曖昧なものですが、むち打ち特有の特徴が資料に記載されていなければ、後遺障害の認定は受けられません。
医師に丁寧に自覚症状を説明することは、とても大切なのです。

特に、以下のポイントについてはわずかな言葉のニュアンスにも注意が必要となります。

①一貫性

症状の内容・場所が事故直後から症状固定までほとんど変わっていないことが大切になります。

もっとも、むち打ちの個別の症状が現れるまでには時間差が生じることもあります。全く新しく症状が出たときは、しっかりと医師に伝えましょう。

②常時性

常時性とは、症状がほぼいつもあることです。「パソコン仕事のあとだけは手がしびれる」など、条件付きの症状は原則として認定対象になりません(首だけは常に動かすものですから、「首を動かすと痛い」場合でも例外的に認定対象になります)

むち打ちの症状には「波」があり、何か条件を満たすと症状がひどくなりやすいものです。伝え方に注意しないと「条件があるときだけ症状がある」と医師に勘違いされてしまいます。

③症状の推移  

事故の直後が一番悪く、そのあと緩やかに回復しているか。「症状が無くなったと思ったらまた現れた」という場合は、後遺症だとは認められません。

むち打ちの症状の「波」はここでも問題になります。医師に、症状が悪化と回復を繰り返していると受け取られてしまいかねないからです。

【認定のための検査を医師がしてくれない場合】
初期に画像検査で異常が出たら、定期的に検査を続けましょう。症状の推移、つまり、症状が事故のあとだんだんと回復していったかどうかがわかります。
画像検査以外にも、「神経学的検査」も無視できません。症状や医師の姿勢、弁護士の助言に応じて、多くの検査をこまめにこなしましょう。
問題は、医師が検査をしてくれるかどうかです。医師からすれば、検査はあくまで治療のためのもの。証拠作りのための検査は無駄と考えてしまう医師は珍しくありません。
弁護士に依頼すれば、どうして検査が必要なのか・どのような検査が必要なのか、などを医師に伝えることができるでしょう。

2.後遺障害診断書を確認する

後遺障害診断書とは、医師が後遺症について総まとめをした、認定手続専用の特別な診断書です。ほとんどの場合、最重要で不可欠の資料になります。

被害者の方が直接受け取ることが多いため、内容の確認が可能です。受け取った後の修正はほとんどの場合とても難しくなります。
必ず、受け取ったその時に後遺障害診断書の内容を確認し、すぐに医師に質問、あるいは修正の依頼をしましょう。

特に、自覚症状の記載は、これまで説明してきた通り、わずかな表現の違いが大問題になります。

弁護士に依頼すれば、どの項目について何をどのように修正すべきかの助言を受けられます。
医師の態度次第では、作成された後遺障害診断書を確認した弁護士が、医師に修正を依頼できることもあります。

3.認定の申請は「被害者請求」で

むち打ちの後遺障害等級認定の申請は「被害者請求」という方法で行いましょう。

後遺障害等級認定を申請する方法には、①被害者請求、②事前認定の二つがあります。

  • 被害者請求
    被害者の方自ら、資料収集と申請を行います。手間がかかる代わりに、有利な証拠を積極的に集めることができます。
  • 事前認定
    ほとんどの資料の収集と申請手続きを加害者側の任意保険会社が代わりに行います。被害者の方の手間はかかりませんが、逆に言えば保険金を支払う側の保険会社任せにするわけです。

むち打ちの症状はわかりづらい「自覚症状」がほとんどです。事故の衝撃で神経が損傷することが原因であるため、様々な検査をしても異常が見つからないことが珍しくありません。

一方、認定を受けられた場合、後遺障害の「等級」(障害の重さに応じて後遺障害をクラス分けしたものです)の中でも、最も低い14級になることがほとんどですが、資料が充実していれば、12級になることもあります。

よって、認定を受けるためにも、よりよい等級が認められるためにも、むち打ちの後遺障害等級認定を申請するときは、被害者請求でするべきなのです。

その際には、弁護士に依頼して資料集めや書類作成の助言を受けましょう。資料集めの負担はただでさえ重いうえ、専門的な知識がなければ適切な資料を集めることは難しいからです。

4.まとめ

後遺障害等級認定を受けることができれば、2019年9月現在、自賠責からは14級なら32万円(画像検査があるなど条件を満たせば12級で93万円)の後遺障害慰謝料が支払われます。
弁護士に依頼すれば110万円または290万円近くまで慰謝料の額を増やせる可能性があります。

仕事などに支障が出たことで将来手に入れられなくなった「逸失利益」も要求できますから、過失相殺や弁護士費用などを考えても、数十万円の賠償金の上乗せができることが多いでしょう。

しかし、むち打ちの後遺障害認定は、かなり難しいのが実情です。
このコラムで説明したようなポイントに沿った証拠づくりや資料集めをするためにも、早くから弁護士に相談しましょう。

泉総合法律事務所では、これまで多くの交通事故のむち打ちに悩まされている方の後遺障害等級認定手続をお手伝いしてまいりました。
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