債務整理

学生なのにFXで借金をしてしまったときの自己破産

学生なのにFXで借金をしてしまったときの自己破産

FX取引では、手元資金がわずかしかなくても、大きなレバレッジにより利益を上げることが出来ます。また、インターネットを利用した口座開設や情報収集も容易です。
そのため、最近では、学生でも、FX取引をしている人が出てきました。

しかし、FX取引は、失敗すれば莫大な損害が生じます。

ネットのまとめサイトやSNSで、FXで失敗すれば破産できないなどと煽られて絶望している方もいるかもしれませんが、基本的に心配ご無用です。ほとんどの場合は、ちゃんと自己破産で借金をなくすことができます。

このコラムはFXで借金を作ってしまった学生の方のために、自己破産の注意点を説明します。

1.FXによる借金でも自己破産は可能

自己破産をすることができないというウワサが立っている原因は、破産法の規定のせいでしょう。

破産法には、原則として借金が免除されない事情(免責不許可事由と呼ばれています)の一つに、ギャンブルが挙げられています。

FXが裁判所からはギャンブル扱いされていることは事実ですから、免責不許可事由の条文だけを素直に読んでしまうと、自己破産できないと信じてしまっても無理はありません。

しかし、実務上は、免責不許可事由のあるほとんどの人が免責、つまり自己破産で借金を免除してもらっています。「裁量免責制度」と言って、裁判官が債務者の一切の事情を考慮して免責を認めてくれるからです。

ただし、あまりに悪質な場合には、免責許可決定がされないことがあることも事実です。

ギャンブルで自己破産に至る人は珍しくありませんから、ギャンブルの一種として扱われるFXで借金をしてしまったからと言って、特別に悪質とされることはさほどありません。

問題はFX以外の事情です。自己破産手続中にまたFXに手を出した場合、借金をした原因について反省をしていないとされかねないでしょう。

また、自己破産手続への協力も重要です。裁判所に呼び出されたのにドタキャンすれば、免責されないリスクは非常に高くなります。

自己破産できるならよかったよかったと油断するのも禁物です。

さて、ここからは、FXで借金をしてしまった学生の皆さんが心配しがちなことについて、

  • さほど心配しないでよいこと
  • 一定のリスクがあること
  • 特に注意が必要なこと

の、大きく3つに分けて、説明します。

2.さほど心配しないでよいこと

(1)ブラックリスト

しばしば自己破産で恐れられるものがブラックリストです。自己破産など債務整理をすると、ブラックリスト、すなわち、貸金業者などが情報共有のために利用している信用情報機関に、自己破産したことが登録されてしまいます。

そのため、一定期間、ローンを組むことや、割賦払い、クレジットカードの発行、他人の保証人になることができなくなります。

しかし、10年もすればブラックリストからは登録抹消されます。

将来、結婚して住宅ローンや教育ローン、自動車ローンなどを組めなくなることを恐れるならば、いっそ早く自己破産したほうが、ブラックリストからの登録抹消も早まります。

(2)財産の処分

自己破産手続のデメリットといえば、代表例が高額財産の処分です。20万円以上の価値を持つ財産は原則として処分されます。

しかし、学生の方の場合は、処分されるような高額財産を持っていることはほとんどないでしょうから、さほど心配する必要はありません。

なお、自動車を持っているもののローンが残っている場合、債権者に引き上げられてしまいます。車検証の名義や契約内容次第では専門家でなければ対処できない問題が生じます。

弁護士に自動車ローンがあることをちゃんと伝えて、指示に従ってください。

(3)資格制限

事故破産手続中は、他人の財産を取り扱う資格や職業で働くことが制限されますが、学生で問題となるものは、せいぜい警備員ぐらいでしょう

警備員のバイトをしている場合は、他のバイトに切り替えてください。

(4)就職活動への影響

自己破産手続による就職活動への影響はほとんどありません。賞罰欄に記入するなど、自己申告する義務は一切ありません。

免責許可決定が確定すれば、制限は解除されますので、制限される資格や職業に関する業界へも就職できます。

不幸にも免責されなかった場合には、本籍地に保管されている破産者名簿に破産者であることが記録され、資格制限が続いてしまいます。

もっとも、個人再生手続による債務整理が裁判所に認められれば、資格制限は解除されます。

また、ブラックリストも、企業がお金を貸すときにだけ確認されるものですから、採用活動で参照されるものではありません。

さすがに銀行や消費者金融への就職については、自己破産の事実が掲載される政府広報誌である官報を確認されてしまう可能性があるため、全く影響が出ないとは保証できないことはご容赦ください。

(5)引っ越しや旅行

自己破産手続では、長期旅行や引っ越しについて裁判所の許可が必要です。

手続の雲行きが怪しいので逃げようとしていることを疑われるような具体的事情がある場合など、極端な場合でない限り、許可は出ます。

キャンパスが変わったので引っ越しをしたいとか、サークルの合宿に行くとか、合理的な理由があり、事前連絡をしっかりして許可をもらっていれば、問題にはなりません。

3.一定のリスクがあること

(1)友人にばれないか

自己破産手続をしたことが大学の友人にばれてしまい、学生生活に影響が及ぶことがないか心配な方もいるかもしれません。

基本的には、その心配は不要です。官報をすみずみまで読んでいる方は、一般的にはほとんどいません。

ただし、以下の場合は、友人にも自己破産の事実が発覚します。

(2)友人から借金をしている場合

自己破産手続では、債権者平等の原則と言って、特定の債権者を除外して手続をすることはできません。

FXによる借金をなくす場合には、他の借金もすべて手続に巻き込みます。隠せば免責不許可事由です。

FXの追証穴埋めのため、友人から借金をしていた場合、友人も自己破産手続に巻き込まれますので、言い逃れはできません。

当然、友人への借金もなくなります。ともかく誠意を持って謝りましょう。

(3)友人に、支払不能後に返済をしている場合

借金全額を返済できなくなった後に、特定の債権者にだけ返済をすることを、偏頗弁済と呼びます。

偏頗弁済は、債権者平等の原則に反しますので、免責不許可事由の一つとなっています。

偏頗弁済があると、破産管財人という自己破産手続の処理をする役職の人が、否認権という権限に基づいて、返済先からお金を取り戻すことがあります。

そのため、偏頗弁済をした友人に自己破産の事実がばれるだけでなく、否認権の行使という厄介ごとに巻き込むことにもなります。

(4)友人に財産を売却している場合

財産を他人に安く売却し、または、ただで譲ることで、配当を減らす行為を、詐害行為と呼びます。偏頗弁済同様、免責不許可事由の一つで、否認権の行使がされます

FXによる借金の穴埋めのために友人に高価な物品を売却している場合、友人を手続に巻き込む恐れがあります。

(5)アパート家賃やスマホの滞納など

アパートの家賃やスマホの通信料の滞納をしている場合、そのままではアパートから追い出される、スマホを解約されるなどの不利益を受ける恐れがあります。

しかし、手続前に滞納分を支払うと偏頗弁済となってしまいます。家族に変わりに支払ってもらうことで、この問題は回避できます。

なお、スマホの割賦払いが残っている場合も同じです。

4.特に注意するべきこと

(1)自己破産手続の費用

事故破産手続の費用には弁護士費用と手続費用があります。

手続の種類により異なるのですが、FXによる借金という免責不許可事由がある場合は、免責不許可事由の調査(及び財産の配当)を行う破産管財人が選任される管財事件になります。

管財事件では、手続が複雑なため、弁護士費用は30~40万円と、もう一つの簡単な自己破産手続の種類である同時廃止よりも高めです。

また、手続費用に関しても、破産管財人への報酬を申立ての時に収める予納金が必要です。予納金は、20万円から50万円ほどです。

学生には重い負担でしょうから、親に援助してもらいつつ、あとはアルバイトを頑張りましょう。

自己破産の費用のためにまた借金することは免責不許可事由になるだけでなく下手すると犯罪です。FXや株、あるいは今度は競馬やパチンコで…と思ったあなた、さすがに思いとどまりましょう。

(2)奨学金の扱いと保証人への影響

奨学金を借りている場合、ご両親など親族に保証人になってもらっていることが多いと思います。

自己破産をすると、奨学金の残高が、保証人に請求されることを覚悟してください。債権者平等の原則により、奨学金も免責され返さなくてよくなりますが、保証人が代わりに支払わなければならなくなります。

最悪、保証人も自己破産含む債務整理が必要になりますから、保証人には、必ず事前に相談をしてください

なお、アパートの賃料の保証人がいる場合、滞納した賃料も手続の対象となりますので保証人に請求がされます。

保証人が債務整理に追い込まれることはないでしょうが、少なくとも自己破産をしたことが保証人にばれることは間違いありません。

5.FXによる借金の整理は弁護士に相談を

学生であるから、FXだからということで、自己破産手続が許されなくなるわけではありません。

弁護士の助言に従い、裁判所や、裁判所を補助する破産管財人に対して誠意を見せて対応し、反省の態度を示せば、借金をなくすことは十分可能です。

ともかく、一人で絶望せず、また、ごまかそうともせず、弁護士に相談しましょう。

泉総合法律事務所では、自己破産により借金問題を解決した実績が多数ございます。是非ともお気軽にご相談ください。

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