債務整理

個人再生の弁護士への法律相談~準備や必要書類~

個人再生の弁護士への法律相談~準備や必要書類~

個人再生手続では、事前の準備が非常に重要です。手続が複雑ですし、また、裁判所を利用することによる規制があるからです。

特に準備の最初の段階である、法律相談の時に、弁護士に必要な情報を正確に提供することは、手続をスムーズに進めるために不可欠です。

そこで、このコラムでは、個人再生手続を弁護士に相談しようとされている方に向けて、相談前に調べておくべき情報・お持ちいただいたほうがよい書類を整理したうえで、法律相談で弁護士にどんなことを伝えた方がよいのかを説明します。

1.借金のお悩みを整理しておく

まず、個人再生手続の場合に限りませんが、債務整理の法律相談の目的は、借金問題を解決して、あなたの生活を再建することです。

ですから、おおざっぱでよいので、

  • 借金のせいで何についてどのように困っているのか
  • 特に解決したい今起きている問題は何か
  • どうしても避けたいデメリットは何か

などを弁護士に伝えられるよう、簡単に考えをまとめておいてください。

2.家計や家族の状況

個人再生手続では、再生計画を裁判所に認可してもらった後、原則3年(最長5年)にわたり、減額された借金を支払う必要があります。

再生計画に基づく返済をやり切れる可能性、専門的な用語では、「再生計画の履行可能性」を裁判所に認めてもらうことが、個人再生手続で最も重要です。

家計の状況や家族の援助の可能性などの情報は、再生計画の履行可能性を認めてもらうための基礎となる情報です。

個別の必要な情報とそれを確認するための資料や手段を説明します。

(1)収入に関するもの

①給料やボーナスの金額

出来れば、給与明細書、源泉徴収票などをお持ちください。

副収入がある方、自営業の方は、課税証明書や確定申告の控えなどがあるとよいでしょう。

②勤務形態や歩合給の有無

再生計画上の返済を続けるため、収入が継続する見込みを確認する必要があります。非正規社員やパート、フリーターの方は、収入の継続性を裁判所に説得するため、これまでの勤務実績を教えてください。

また、歩合給の方(もしくは個人事業者の方)ですと、収入が不定期で収入額の変動が大きくなることがあります。

その場合、債権者に反対される恐れのない「給与所得者等再生」という種類の手続を利用できるか、慎重な検討が必要になる可能性があります。

③年金や児童手当など

これらも収入に含まれます。通知書や支給決定書をお持ちください。

(2)支出に関するもの

①生活費などの金額                                               

できれば、世帯全体の家計簿をお持ちください。うろ覚えだと、収入を大きく、支出を小さくいってしまいがちだからです。

税金や水道光熱費などに関しては、具体的な事情によっては、単に支出の金額にとどまらない問題があります。

詳細は、コラムの最後に説明します。

②借金・ローンの返済額                                                     

支払いが出来なくなる恐れがあるかどうかや、現在よりどれだけ返済額が減るかが確認できます。

(3)家族に関するもの

個人再生では、ご家族の情報、さらには現実の協力が重要となります。

ご家族には秘密にしたいという方もいるでしょうが、出来れば、少なくとも同居のご家族とはお話をしてください。

ご家族に関して、準備すべき情報や資料は、下記の通りです。

①同居しているか、また、家計が同一か

世帯や家計が同じかどうかは、履行可能性の判断の際に、家族の収入を考慮できるかなどに影響します。

②家族の年齢や収入

家計に組み込まれているご家族の収入も含めて、履行可能性が判断されます。

また、給与所得者等再生では、再生計画の返済総額を決める時に、家族の収入金額や年齢が重要となることがあります。

③家族の経済的余裕

個人再生手続を成功させ、また、デメリットを回避するには、家族の援助が必要となることがあります。

家計が異なる家族からの継続的な援助を加味することで、再生計画の履行可能性が認められることがあるのです。

手続を急ぐ必要がある場合にも、弁護士費用の支払を援助してもらえば、相談から裁判所への申立てまでの時間を短縮できます。

さらに、自分が負っている債務を代わりに支払ってもらう「第三者弁済」をしてもらうことで回避できるデメリットもあります。

3.借金の状況

言うまでもなく、借金の状況は、債務整理の法律相談で核心となる情報です。

(1)借金の理由や経緯

個人再生手続を利用するには、住宅ローンなどを除き5000万円以下であることが必要です。

また、再生計画の返済総額は、いくつかの基準のうち最も大きい金額に決まるのですが、その基準の一つ、「最低弁済額」は、借金総額に応じて決まります。目安としては、借金総額の5分の1です。

借金に関することを時系列で書いたメモがあるだけでも、相談がスムーズに進みます。

(2)個別の借金について

①全員の債権者の名前や借金金額

個人再生手続では、「債権者平等の原則」と言って、全ての債権者を公平に扱う必要があります。友人や親族、勤務先を含む、全ての債権者を教えてください。

また、一般的に用いられる「小規模個人再生」は、債権者の人数や借金の金額による多数決で手続が打ち切られてしまいます。

債権者が強硬な業者であるのか、また、それぞれの借金の金額は、債権者による反対のリスクがどれだけあるのかの判断に必要です。反対リスクが高いようなら、給与所得者等再生の利用を検討します。

②最後の返済日

最後に返済してから、全く音沙汰もない期間が何年も続いていれば「消滅時効」により、借金がなくなっている可能性があります。

③担保の有無

借金について担保があると、その借金の債権者は、担保を処分してしまいます。契約書などで確認してください。

④保証人の有無

保証人に残高が一括請求されますから、保証人と対処法を検討しなければなりません。

契約書を確認し、また、保証人になっていそうな家族などに連絡を取ってください。奨学金などは特に注意しましょう。

⑤誰かの保証人になっているか、これからなるか         

他人の借金を保証する義務も手続の対象になります。

なお、借金を借りた本人に悪影響はありません。また、ブラックリストに登録されるので、数年間、保証人になれなくなります。

(3)借金に関して生じた問題について

①支払いの遅れや裁判、差押えの有無

これらのようなことがあると、手続を急ぐ必要があります。これから裁判所に初めて行くのであれば、その日を必ず教えてください。

督促状、訴状などがあれば、お持ちください。

②闇金からの借金の有無

闇金による悪質な取り立てを止めるため、弁護士はすぐに対策を取ります。

なお、闇金にお金を返す必要はありません。

③相談直前に借金などの支払いをしていないか

返済不能なのに特定の債権者にだけ優先返済することを「偏頗弁済」と言います。

偏頗弁済は債権者平等の原則に違反するので禁じられています。

4.財産の状況

個人再生手続の最大のメリットのひとつは、担保にされていない財産を裁判所に処分されないことです。

しかし、自己破産で債権者に配当される財産に相当する金額(清算価値と言います)以上の借金を、債権者に支払う必要があります。

財産を多く保有している方は、清算価値により再生計画上の返済額が高額となり、履行可能性が認められにくくなります。

一方で、財産を取り崩すことで、収入不足を補えないかを判断するためにも、財産の状況に関する情報は重要です、

(1)個別の財産について

①預貯金

通帳をお持ちください。東京地裁では、20万円以下なら清算価値に計上しません。

生活費や弁護士費用の支払いなどで20万円以下になるかの確認が必要です。

②退職金の見込み額

退職金の8分の1が、原則として清算価値になります。

勤続年数や退職時期次第で割合が変わりますので、その点もお伝えください。

③定期預金や社内積立、積立型の保険の有無、そしてその金額

定期預金などの積立金はもちろん、生命保険や学資保険の「解約返戻金」も清算価値に含まれます。

正式な証明書とまではいかずとも、保険証書などをお持ちいただけますと助かります。

④不動産の有無と所在地、できれば大体の値段

不動産は清算価値を押し上げる最大の財産です。

もっとも、住宅ローンの残高が差し引かれて清算価値が計算されます

また、評価方法は各地の裁判所や具体的事情で異なりますですから、相談時点では不動産の所在地、推測できる大体の値段と推測の理由を教えていただくだけで結構です。

⑤自動車やバイクなどの車種と年式など

車種と年式でざっとした清算価値がわかります。

5~7年の中古車なら清算価値なしとされることもあります。

⑥自動車ローンの有無と金額など

自動車ローンがあれば、原則、債権者により自動車は引き上げられてしまいます。それにより、困難な法律問題が生じることもあります。

自動車ローンがある場合は、出来る限り、車検証のコピーや契約書を持ってきてください。

⑦その他の価値ある財産

たとえば、投資で失敗してしまった方の場合、口座に投資資産が残っていれば、それも財産です。

取引明細書など、資産の価値がわかる資料を確認して、その金額をお伝えください。

(2)その他の財産や清算価値に関すること

①偏頗弁済や詐害行為

偏頗弁済や、手続直前に財産を他人に譲る詐害行為が手続前にあると、清算価値が不当に減ってしまいます。

そのため、偏頗弁済や詐害行為がある場合には、返済額や財産の価値が清算価値に上乗せされます。

②相続の有無や内容と時期、相続相手

相続財産は、遺産分割協議をしていないと、清算価値の計算が複雑になる恐れがあります。

③他人にお金を貸しているなら、その相手と金額

借用書などの資料があればお持ちください。

④過払い金について

過払い金も清算価値になってしまう恐れがあります。

以下の事情を大体でよいので教えてください。

  • 完済した借金の有無、完済時期
  • 貸金業者との和解の有無
  • 借金の初回借入日
  • クレジットカード利用の内容や金額

5.勤務先に関する情報

(1)勤務先の基本情報や連絡について

勤務先の名前や住所はもちろん、弁護士から勤務先に連絡してよいか、また、事務所名を出してよいかについて、教えてください。

勤務先からの借り入れがあると、弁護士が勤務先に連絡を入れる必要が生じることがあります。

(2)給料やボーナスの支給時期や支給方法、振込先口座のある銀行

給料やボーナスは、収入として問題になるだけではありません。振込先口座のある銀行から借金があると、口座が凍結され、残高と借金が相殺されてしまいます。

そのため、振込先口座を変更するなどの対策が必要です。

(3)勤務先からの借金の有無、給料天引きで返済しているか

債権者平等の原則がありますので、勤務先に手続がばれることは避けられません。また、給料からの天引きにより返済をしている場合、そのままでは偏頗弁済となってしまいます。

弁護士が勤務先に連絡すれば、天引きを止められる可能性があります。

6.住宅ローンがある場合

個人再生手続の最大の特徴は、「住宅資金特別条項」により、住宅ローンが残っている持ち家を住宅ローン債権者に処分されずに、他の借金を債務整理できることです。

基本的な書類として、住宅ローンの契約書・住宅ローンの保証会社と結んだ保証委託契約書などをお持ちください

(1)持ち家を残せる条件

住宅資金特別条項には利用条件があります。条件をクリアしているか、相談の段階で確認が必要です。

①住宅ローンで借りたお金の使い道

持ち家に関係のない使い方をしていると住宅資金特別条項は利用できません。

登記など諸費用はいいですが、生活費に使っていてはいけません。

②持ち家に他に抵当権があるか

あなたが負担する住宅ローン以外の抵当権があってはいけません。

③持ち家の利用状況

床面積の半分以上をあなたの世帯の生活のために利用していることが必要です。事務所や店舗と兼用しているなら、簡単な間取り図をメモしてください。

また、別荘などは適用外です。

④保証会社による代位弁済の有無や時期

住宅ローンを数か月延滞すると、保証会社が住宅ローン残高を立て替え払いします。これを、代位弁済と言います。

代位弁済から6か月経過してしまうと、住宅資金特別条項は利用できません。

(2)再生計画の履行可能性に関して

住宅ローンは減額されませんから、その返済も含めて、再生計画の履行可能性の判断が必要です。

住宅ローンの返済額、返済計画などの資料もお持ちください。

7.そのほかの確認事項

(1)税金など公的納付の滞納について

税金をはじめ、健康保険料、年金保険料、下水道料金、保育園料などは、個人再生手続の影響を一切受けません。

滞納したままだと、手続中ですら、滞納処分により給料や銀行口座を差し押さえられる恐れがあります。滞納している金額や滞納期間を教えてください。

納税通知書や督促状などがあればお持ちください。

(2)水道光熱費や携帯・ネット関連費用、家賃などの、支払方法や滞納の有無

いずれも、支払方法がクレジットカードならば、ブラックリスト登録で支払いができなくなります。

また、借入先の銀行で口座振替をしていれば、口座凍結で支払いができなくなります。

さらに、

  • 携帯の通信料や家賃の滞納がある場合
  • 携帯本体の割賦払いが残っている場合
  • 家賃の支払いが信販会社を介した立て替え払いになっている場合

には、通信契約や賃貸借契約が解約される恐れがあります。

滞納や割賦払い残金を支払ってしまうと、偏頗弁済になってしまいます。親族に第三者弁済してもらえるか検討が必要です。

第三者弁済が無理な場合や、家賃が立て替え払いとなっている場合は、解約はやむを得ません。

引っ越しや、プリペイド携帯の購入について、弁護士に相談しましょう。

(3)婚姻費用、養育費、損害賠償金など

手続開始後に支払日が来る婚姻費用や養育費は手続の影響を受けません。

また、手続開始前の滞納養育費などや、一部の損害賠償金は、再生計画に基づく支払いをした後に、残額を一括払いすることになります。

これらの負担は、再生計画の履行可能性に悪影響を与える可能性があるので、金額などを説明できるようにしてください。

8.個人再生は弁護士に相談を

個人再生手続は、同じように裁判所を用いる債務整理手続である自己破産手続のリスクやデメリットを回避することが出来る、便利な債務整理手続です。

ただし、借金の一部だけを返済する計画を立て、それが実行可能か判断するという仕組みのために、手続や利用条件、基準は複雑です。提出が必要な書類や確認事項も非常に多くなります。

何より、その複雑な制度を利用していくうえで、手続の見通しを正確に立てることは、弁護士でなければ困難です。

泉総合法律事務所では、これまで多くの借金問題を個人再生手続で解決してきた豊富な実績がございます。ぜひ、準備を整え、お早めにご相談ください。

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