債務整理

自己破産でしてはいけないNG行為とは?

自己破産でしてはいけないNG行為とは?

自己破産手続は、借金全額を免除してもらえる最も強力な債務整理手続です。

しかし、裁判所を用いる自己破産手続には、すると不利益が生じるNG行為が多くあります。

このコラムでは、自己破産手続をする上で気をつけねばならないNG行為とその対策や注意点を悦明します

1.自己破産手続とは

自己破産手続は、裁判所に申立てをして、支払えなくなった借金を原則全額免除してもらえる債務整理手続です。

自己破産手続には、以下のようなメリットがあります。

(1) 借金が原則全額免除される

自己破産手続によれば、税金など一部の例外を除く借金がすべて完全に無くなります

自己破産手続により借金が無くなることを免責と言い、裁判所が免責を決定することを免責許可決定と呼びます。

(2) 取り立てがとまる

免責許可決定がされる前でも、自己破産手続を弁護士に依頼すると、債権者からの取り立てが止まります。

(3) 差押えの排除

給料などを差し押さえられている場合、手続が始まると差押えは中止されます。また、手続中は、新しく差し押さえがされることはありません。

(4)債権者の意向を無視できる

他の債務整理手続では、大なり小なり債権者の意向が債務整理手続に影響しますが、自己破産手続では、債務者の財産を配当しますから、債権者の意向は事実上影響しません。

2.NG行為の具体例と対策

自己破産手続は、公的機関である裁判所を利用して、債権者に大損害を与えてでも、債務者を救うために、借金を免除するものです。そのため、免責を認めるには不適切な事情があると、法律上は原則として免責が認められないとされています。

このような事情は、免責不許可事由と呼ばれています。
自己破産手続のNG行為とは、ほぼすなわち免責不許可事由のことです。

免責不許可事由があっても、悪質でなければ、裁判所が総合判断で免責を認める「裁量免責制度」により、ほとんどの人が免責されています。しかし、免責不許可事由があると、免責されないリスクが生じることに変わりはありません。

また、手続の負担も重くなってしまいます。免責不許可事由がある場合に、裁量免責をしてもらえなくなる可能性を上げてしまう行為もあります。

それでは、NG行為の具体例と、対策を説明します。

3.免責不許可事由となるNG行為

(1) 友人などに借金を優先的に返済してはいけない

借金全額をもはや支払えないことが明らかなのに、せめて友人だけでも・・と、友人など特定の債権者に優先弁済してはいけません。そのような返済は、「偏頗弁済」という免責不許可事由になります。

自己破産手続の重要なルールの一つに「債権者平等の原則」というものがあります。債権者は、公平に扱われなければならないというルールです。

偏頗弁済は、債権者平等の原則に真っ向から反するのです。非常に多い免責不許可事由です。

友人や親族、勤務先との関係でももちろん、滞納している家賃やスマホの通信料、スマホ本体の割賦払い残金の支払でも問題となります。

偏頗弁済をされた相手からは、手続の中で、そのお金が取り返されることになりますから、自己破産をしたことがバレるだけでなく、迷惑が掛かります。友人などから借金の返済を要求されても、正直に、自己破産をすることを伝えましょう。

また、債権者平等の原則があるから支払えないとしっかり説明し、誠意をもって謝りましょう。

滞納家賃やスマホ費用については、親族に代わりに支払ってもらいましょう。

(2) 金目の物を安く売り払ってはいけない

返済資金捻出などの目的で、配当されるはずの財産を安く売り払ったり、他人にあげたりすることは「詐害行為」という免責不許可事由になります。詐害行為があった場合も、手続の中で財産が取り返されてしまいます。

また、詐害行為とされるかの基準は、時期や相手により細かく異なります。

少なくとも、自己破産手続直前であるとか、事情をよく知っているだろう親族相手の財産の売却は危険です。借金に困っている状況での財産の売却は控えましょう。

(3) クレジットカードの現金化をしてはいけない

クレジットカードのショッピング枠で購入した物品や金券を、換金ショップで換金することも免責不許可事由です。立て替え払いをしたカード会社が一方的に損失を受けてしまいます。

詐害行為でもそうですが、借金に困ったら、悪あがきをせず、弁護士に相談しましょう。

(4) 闇金から借金をしてはいけない

闇金から借金をすることも免責不許可事由になる恐れがあります。

そもそも、闇金は悪質な取り立てを行う危険な業者です。

闇金は、手続中でも、官報を確認してダイレクトメールで勧誘をしてきます。絶対に、闇金には手を出さないでください。

(5) 貸金業者を積極的にだまして借金してはいけない

すでに謝金全額を支払え切れない状態になっているのに、ちゃんと借金を返済できるように積極的に相手をだまして借金をすることは、免責不許可事由になります。

ともかく、お金に困って色々と悪あがきをすると、泥沼にハマってしまうのです。

(6) 借金を隠してはいけない

債権者平等の原則がありますから、特定の人からの借金を免除しないようにすることはできません。全ての債権者からの借金を申告してください。

(7) 財産を隠してはいけない

財産隠しは、最も悪質とされる免責不許可事由です。これだけで免責されないことも珍しくありません。

また、破産詐欺罪という犯罪にもなります。

自己破産の前に、自分から家族などへと

  • 家や保険の名義を移す
  • 口座の預貯金の送金

などといったことは絶対にやめてください。

4.裁量免責されない可能性が高くなるNG行為

免責不許可事由がある場合に、裁量免責がされなくなる可能性を高めてしまう行為は以下のとおりです。

なお、ほとんどは、それ自体が免責不許可事由にもなります。

(1) 浪費やギャンブル、投資を続けてはいけない

浪費やギャンブル、ギャンブル同然の信用取引による投資などは、それ自体が免責不許可事由です。

それらによる借金で自己破産をしようとしているときに、弁護士と相談して以降も、浪費やギャンブルを続けていると、裁判所は、借金を反省していないと考えてしまいます。

(2) 裁判所や破産管財人への対応をおろそかにしてはいけない

破産管財人とは、免責不許可事由の調査や、財産の配当などを行う人です。

裁判所や破産管財人に対して、以下のことをすると、それ自体が免責不許可事由になります。

そもそも、本来、法律上は免責が認められないにもかかわらず、特別に免責を認めてくれるわけですから、その裁判所や破産管財人に対して、以下のような不適切な態度をとると、反省の意思なしとされても仕方がないのです。

  • 財産に関する書類を捨てる、隠す、偽造する
  • 財産申告で嘘をつく
  • 説明を拒否し、または、嘘の説明をする
  • 配当を妨害する
  • 自己破産についての質問に対して説明しない
  • 免責不許可事由の調査に協力しない

5.自己破産手続で注意するべき行動ポイント3つ

いろいろとNG行為を上げてきましたが、おおざっぱにまとめると、以下の3つに注意するべきです。

(1) 財産をできるだけ動かさないこと

預貯金を引き出すだけでも、詐害行為や偏頗弁済を疑われる危険があります。

ともかく、借金を支払いきれない状態になったら、下手に足掻かずに、すぐに弁護士に相談して、よくないことをしないよう助言を受けましょう。

(2) 債権者の利益を害さないこと

財産を動かさないことも、結局は、その財産の配当を受ける債権者の保護のためです。

借金をどうにかしようとあがけばあがくほど、債権者に迷惑をかけ、免責不許可事由となる行動をしてしまうリスクが高くなります。

自己破産の決断自体を急ぐ必要はありません。しかし、弁護士に相談し、現状を専門的な立場から客観的に分析してもらうことは、債権者の利益を害さないために重要です。

(3) 自己破産手続の適正な進行に協力すること

手続に協力しないことは、支払えなくなってしまった借金を、債権者に大損害を与えてでも、税金を用いて免除してくれる裁判所を裏切る行為です。

逆に言えば、多少の免責不許可事由があっても、積極的に手続に協力し、真摯に反省していることを態度で示せば、裁量免責をしてもらえる可能性は十分あります。

弁護士の助言をもとに、裁判所や破産管財人の指示に従いましょう。

6.自己破産のNG行為は弁護士に相談を

自己破産手続は、唯一、借金全額をゼロにできる債務整理手続です。もっとも、専門家ではない方が、自己破産手続を回避しようとするあまり、自己破産をする上で不利になってしまう行動をしてしまうことがよくあります。

手の打ちようがないとまでは言いませんが、やはり、このコラムで説明したようなNG行為を重ねていると、費用が余計にかかったり、手間や時間の負担が多くなったりしてしまう恐れが高くなります。

このコラムで説明したNG行為は、あくまでも簡単な大枠です。あなたを取り巻く具体的な状況のなかで、どのようなことをどこまでしてよいのかは、弁護士に相談しなければわかりません。

泉総合法律事務所春日部支店では、自己破産手続に精通した弁護士が多数在籍しております。春日部市、越谷市、さいたま市岩槻区、松伏町、杉戸町、宮代町、東武伊勢崎線・野田線沿線にお住まい、お勤めの皆さんのご相談をお待ちしております。

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