過払い金返還請求の手続のポイント~手続の流れと期間、注意点~
過払い金返還請求をする上で、気になってしまうのは、手続がどのように進んでいくのかという手続の流れと、手続にどれくらい時間がかかってしまうのかという手続の期間や、デメリットが生じることはないかといった注意点です。
このコラムでは、大まかな流れ、各段階に至る期間、各段階での注意点など、過払い金返還請求の流れの中でのポイントを説明します。
過払い金返還請求をする上での抵抗感を、少しでも和らげていただければと思います。
このコラムの目次
1.手続の流れの全体像
過払い金返還請求の流れは主に以下のとおりです。
- 弁護士との相談
- 取引履歴の開示と引き直し計算(相談から1~3か月)
- 交渉(相談から4~6か月)
- 裁判の提起
- 裁判提起後の交渉(相談から6か月~)
- 裁判
- 裁判所からの和解勧告に基づく交渉
- 判決(相談から1年近く)
- 過払い金の返還(相談から最短4か月程度、裁判が長引くと1年以上)
過払い金返還請求は必ず裁判で判決により過払い金を取り戻すものではありません。3、5、7の各段階で和解契約を締結すれば、その段階で、9の過払い金返還に進むことになります。
それでは、さっそく流れの中での詳細な期間や注意点を説明します。
2.流れごとの手続の内容、期間や注意点
(1)弁護士との相談
弁護士と過払い金返還請求の相談をします。確認事項は、主に、
- 返還請求先の貸金業者
- 返還をしていた期間
- 完済経験の有無
- 借金残高の有無
- 支払いが滞ったことがあるか
- 和解契約をしたことがあるか
などでしょう。持ち物は、
- 印鑑
- 身分証明書
- 貸金業者からの請求書など
- 貸金業者のカード
- もしあれば、和解契約書など
となります。
(2)取引履歴の開示と引き直し計算
①取引履歴の開示:相談から1~3か月経過後
弁護士は、貸金業者に対して取引履歴の開示を要求します。借金が残っていれば、受任通知も送付して取立てを止めさせます。
取立てが止まる受任通知を送れるのは、弁護士や司法書士だけです。本人での請求では取立ては止まりません。
取引履歴の開示は、貸金業者に義務付けられています。
悪質な業者が、実際には保管しているのに「捨ててしまった」とうそをついてきた場合、とりあえずの取引の過程をもとに、裁判を起こして開示させるなどの対策をします。
②注意点
借金残金がある場合は、ブラックリストに登録されます。
- クレジットカードのキャッシング枠の残金がなくても、ショッピング枠残金がある場合
- 他の会社と合併している場合
には、注意が必要です。
払いすぎていたお金などで借金残高を打ち消せれば、ブラックリストからは解除されます。そうでなければ、5年間登録が続きます。
新規クレジットカード作成やローンなどができなくなりますので、弁護士によく確認してください。
③引き直し計算
グレーゾーン金利に基づく支払いの履歴を、取引履歴で確認します。そして、利息制限法での上限金利(15~20%)で支払っていたならばどうなっていたかを確認します。
途中で借金の支払いが終わっているのに、貸金業者への支払いが続いていれば、その支払いが、貸金業者から取り戻せる過払い金の元本となります。
(3)交渉:相談から2~3か月経過後から最短でも1か月かかります
弁護士と貸金業者との間で交渉をします。
貸金業者は、ほとんどの場合、満額での返還をしません。払いすぎたお金自体の9割が良いほうで、なかには5割という業者もいます。
利息は、ごく一部を除き支払おうとしません。
法律上問題となることがあれば、支払いを拒否することもあります。
返還時期についても、返還を遅くすればするほど金額を大きくするなど、時間稼ぎをします。
最終的に、貸金業者の提示額で和解するかを判断するのは、弁護士ではなく依頼者となります。弁護士の助言のもと、その条件でよいかを判断してください。
(4)裁判の提起
裁判では、メリットもデメリットも大きくなります。また、相手方の貸金業者の態度や、具体的な個別の事情によっても違いがあります。
専門家の助言をしっかり聞いて、裁判をするか判断しましょう。
メリットデメリットは後述します。
いざ裁判となったら、貸金業者に対して過払い金を返還するよう要求する訴状を裁判所に提出します。
訴状を提出してから1か月後に裁判が始まり、それ以降1か月ごとに裁判所で主張のやり取りをします。
(5)裁判提起後の和解
貸金業者との和解は、訴えを提起した後でも可能です。一般的には、裁判を起こした後のほうが、貸金業者の提示額は上がります。
しかし、やはり、満額とまではいかないことが多く、利息も支払ってくれることはほとんどありません。
そこで手打ちをするか、それともあくまで徹底的に裁判で争うかをご判断ください。
(6)裁判
裁判による過払い金返還請求の、主なメリットとデメリットは下記のとおりです。
メリット
・戻ってくる過払い金がより大きくなる
裁判で勝訴すると、過払い金全額が戻ってきます。
和解だと過払い金元本の5~9割がほとんどですから、大きな差です。
・過払い金の利息がつく
皮肉な話ですが、過払い金には、本来、貸金業者が利息を追加で支払わなければなりません。その金額は、年5%(日割り計算可能)です。
過払い金が発生してから2019年現在では10年以上たっていますから、単純に計算して、過払い金元本の50%、つまり半額が利息になりえます。
利息の支払いが認められれば、戻ってくるお金は。過払い金元本と合計して、元の1.5倍以上になるわけです。
デメリット
・時間がかかる
裁判は、基本的に1か月に1回やり取りをするというスローペースです。貸金業者が引き延ばし戦略に出ることもあります。
上訴する、あるいはされると、1年以上かかることもあります。
時間がかかると、相手が倒産してしまい、ほんの数%しか取り戻せないこともあります。
・敗訴する恐れがある
裁判で必ず勝てるとは限りません。敗訴するリスクを無視できない場合は以下のとおりです。
- 10年以上前に途中で完済していた場合
- 支払いの遅れがあった場合
- 和解契約をしていた場合
・弁護士費用が増える
弁護士費用の相場は、交渉のみなら過払い金の20%ですが、裁判までいくと、25%に増えます。
なお、泉総合法律事務所では、裁判になっても据え置きの20%のままです。
専門家に依頼すれば、依頼者がすることはほとんどありません。ただし、追加の証拠集めをお願いすることはあります。
(7)裁判所からの和解勧告
裁判では、しばしば、判決の前に、裁判所から「こんなところで仲直りしたらどう?」という和解の勧告がされます。
過払い金以外の訴訟でもそうですが、一般の方の認識と異なり、ほとんどの裁判では、和解で終わることが多いのです。その内容は、具体的事情により千差万別です。
弁護士の助言のもと、OKを出すか判断してください。
(8)判決
裁判所からの和解も嫌だというのならば、判決を待ちます。
判決が出て、満足いくものであればこちらから上訴はしません。しかし、敗訴した場合、上訴するか、それとも時間や弁護士費用を考えて、ここで終わらせるかを判断しましょう。
強硬な貸金業者の中には、ほぼ必ずと言っていいほど上訴してくる業者もいることに注意が必要です。
(9)過払い金の返還
貸金業者と和解をしたり、判決が確定したりすれば、過払い金が返還されます。
判決の場合は、判決が出てから返還までは約1~2か月程度です。和解の場合は、貸金業者との交渉内容次第です。
3か月後なら6割しか返還しないが、6か月後に返還するなら8割返還するというようなことを言ってくる業者もいるためです。
3.専門家に頼むメリット
インターネットでは、「過払い金は自分でも返還請求できる」と、詳細請求方法を紹介しているサイトが大量にあります。
確かに、専門家に依頼せず、過払い金返還請求を借主のあなた個人が自分だけですることは可能でしょう。また、専門家への依頼費用が掛からないことも事実です。
しかし、過払い金返還請求は、あくまでも法律問題です。法律の専門家に依頼すべきメリットはあります。
(1)返還金額を増やしやすい
貸金業者は、口八丁手八丁で返還額を減らしにかかります。相手が専門家でないとわかればなおさらです。
過払い金返還請求には、法律の専門的知識が必要です。専門家でなければ交渉は困難なことがやはり多いのです。
(2)手間がかからない
貸金業者との交渉や裁判などには、非常に手間がかかります。時間がとられることはもちろん、精神的負担は非常に大きなものです。
法律の勉強を自分でしなければ業者に反論できません。
その手間暇を考えれば、専門家に費用を支払ったほうが安上がりなことも多いのです。
(3)周囲に知られにくい
自分で貸金業者と交渉したり、裁判をしたりすると、自分の電話に貸金業者から電話がかかってきたり、自宅に裁判に関する書類が郵送されたりします。
かつて借金をしていたことを、周囲の人に知られてしまうリスクが高くなります。
専門家に依頼すれば、専門家が貸金業者との交渉を代行します。専門家との連絡も、最初の相談と、あとは、いくらで和解するか、裁判をするかの簡単な電話連絡のみです。
4.過払い金返還請求は法律の専門家の弁護士に相談を
過払い金返還請求について、「今更するのもどうだろう」、「そもそもなにをどうするのかわからない」、「結局、面倒くさそう」と、抵抗感がある方はまだまだ珍しくありません。
このコラムが、過払い金返還請求の基本的な流れについて最初から最後までの理解を深める手助けとなっていれば幸いです。
泉総合法律事務所は、これまで多数の過払い金返還請求について、任意交渉及び裁判双方の豊富な取扱い経験がございます。
相談は無料、費用は返還額の20%で、裁判になっても同額です。是非、お気軽にご相談ください。
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